Kindle向けに技術書を3冊出してみて思ったこと
2016/06/08
今年(2016年)の4月から、毎月1冊のペースでKindle向けの技術書を出しました。本日出した分を含めて3冊。
VirtualBox/Ubuntuスタートアップガイド Kindle版
2016-04-28発売
Ruby on Rails 5.0 スタートアップガイド Kindle版
2016-05-28発売
テキストエディタAtom入門 Kindle版
2016-06-07発売
もともとは『Ruby on Rails 5 初級』というタイトルで書き始めたのですが、初心者向け講座のテキストで使用することを思い描いているうちに、Ruby on Railsの学習を始める前に必要な前提知識とか環境設定とかは別冊にしたほうがいいんじゃないかという考えに至りました。
1冊目でWindowsユーザーがVirtualBoxでUbuntuをインストールする手順を学び、2冊目でMac/UbuntuユーザーがLinuxの基本コマンドの使い方とRubyGems/Bundlerの仕組みを学びます。
3冊目ではAtomの使い方を解説しました。私の考えでは、初心者向けプログラミング講座がうまく進むかどうかは、参加者がテキストエディタを使いこなせるかどうかにかかっています。MacでもWindowsでもUbuntuでも使えて、Ctrl-C
とCtrl-V
でコピペでき、ちゃんとRubyの構文を理解してくれるテキストエディタを、講座の冒頭で紹介したいという意図です。
自社ブランドで電子書籍を出版するのは、今回が初めてです。
B5変型版のPDFに変換して見ると、一冊の分量はだいたい60ページから120ページぐらいになりました。この程度のページ数を紙に印刷すると厚さが5〜10ミリぐらいになります。書店に置いたときに目立たないので、大手出版社から普通の本として出してもらうのは難しそうです。
しかし、著者としてはこのぐらいの分量がちょうどよいと感じました。書店に流通している技術書の多くは300〜500ページぐらいだと思うのですが、ここまで長いと校正が相当に辛いです。用語法を統一したり、ソースコードの整合性を取ったりするのに実に多くの時間を取られます。
電子書籍の場合はページ数のことをあまり気にする必要がありません。適当なところで筆を止め、校正して、リリースできます。リリースすると気分がすっきりします。仕事にメリハリができます。
Kindleの売上推移は、Amazon Kindle ダイレクトパブリッシング(通称KDP)にてほぼリアルタイムで確認できます。正直に告白すれば、リリース直後の数日はまさに一喜一憂という感じになります。これが、実に面白いのです。
「紙の本」を出した時は、印税の支払通知書が来て初めて売れたのかどうかがわかります。たいていは初版第一刷の印税を最初にいただきますので、重版がかかるまでは世間の反響がよく分かりません。編集担当者に聞けば教えてもらえるけれど、頻繁に尋ねるのもためらわれます。とても忙しそうだし。
さて、肝心の売上額はどうだったのでしょうか。まあ、これは企業秘密です。たいしたことはありません。KDPセレクトに登録すると、Amazonから著者がもらえるロイヤリティは70%になります。「KDPセレクト」とは、要するに「その本のデジタル版はKindleでしか売らない」という契約を締結するということです。Amazon以外のプラットフォーム(楽天ブックスとか達人出版会とか)で売りたい場合はKDPセレクトに登録できないので、ロイヤリティが35%になります。私は、当面KDPセレクトに登録することにしました。
「紙の技術書」の印税率は8%ぐらいなので70%はまさに桁違いですが、書店に並ばないという大きなハンディを負います。私の周辺を見渡しても、頻繁にKindleで技術書を購入している人をあまり見かけません。実際のところ、ソースコードや画面キャプチャが多数掲載されている本をKindleやスマホの画面で読むのは、少し厳しいです。10インチタブレットなら読みやすいと思いますが、そんなに普及していないですよね。
とはいうものの、計算上は「紙の本」の場合の10分の1程度売れれば著者の手取りは同じになるわけです。ロイヤリティの高さと流通のハンディが打ち消し合って、そこそこの収入になります。
実は、試験的に「紙の本」も自費出版してみました。
VirtualBox/Ubuntuスタートアップガイド ペーパーバック版
2016-05-30発売
こちらの方の顛末については、また別の機会に。